butterfly・stroke inc.

青木克憲の考え方

Chapter 11

明るく表現したものをまじめに伝える ~
共感を得るもの/期待してもらうもの

さて、最後に「明るく表現したものをまじめに伝える」について話したいと思います。

広告の世界においては、本来ならこのパートはクライアントに依存する部分なので、クリエイターが担うことは少ないかもしれません。大企業のキャンペーンであれば大企業の営業の方々が担う部分です。

開発から広告表現までいろいろなセクションを経て、出来上がった最終的な見え方(商品や広告の成果物)はどう考えられて、どう練り上げられ、ここに至ったのか、その長いプロセスをきちんと理解して営業してもらわないと最後の消費者には伝わりません。

この文のタイトルにした言葉を言われていた会長さんは「ここがなかなかうまく出来ない」とおっしゃっていました。僕も何となくわかる気がします。まじめにものを伝えるのは難しいものです。良いときは、つい自慢してしまったり、悪いときは自分から引き気味になってしまったり……。伝える人は、必ずそういう自分の判断を乗せて話してしまうもので、よく話を聞いて理解してから伝えてもらわないと、どんどんと話が変化してしまうからです。

だから話を受ける側に本来のポイントが伝わりにくくなるのです。この伝言ゲームを正確にするためにも、コンセプトワードはとても大切です。

出来たものが、最後になって、競合他社に出し抜かれ、結果が出せなくなってしまったとしても、それまでの過程でどう考え、どうしようとしたのか、ものの背景をまじめに伝えていくことが一番重要なことです。正直にまじめに伝えられれば、その過程のどこかを良いと思ってもらえたり、部分的にでも、その背景に共感してもらえるはずです。

作ったこと、やったことに共感してもらうこと、そしてその次の展開を期待してもらえるような企業やクリエイターになることが目指すべき方向なのだと思います。

僕もバタバタと仕事をしていながらも、『わかりにくいいものをわかりやすく、わかりやすくしたものを深く考えて、深く考えたものを明るく表現して、明るく表現したものをまじめに伝える』クリエイターでありたいと常に考え、行動しています。

とはいえ、現在、この言葉通りの制作プロセスをうまくできているとは、自分自身まだまだ思えません。

だからこの言葉は、僕の制作活動において、また自分自身にとって一番しっくりくる、目標でもあり、重要で大切な言葉なのです。