butterfly・stroke inc.

青木克憲の考え方

Chapter 3

20年に及ぶフィールズとの絆

バタフライ・ストロークの創業以来約20年、ずっとお世話になっているクライアントがフィールズです。フィールズは、遊戯機器の流通・開発からスタートした会社で、現在はIP(Intellectual Property=知的財産)、版権、コンテンツを取得管理する事業を大きく拡大させています。この中で、僕が積極的に関わってきたのがIPの再生戦略です。IPの再生とは、コンテンツの価値リバイバルプランとでも言うもので、たとえば週刊誌で人気を博した漫画を、アニメ、実写、マーチャンダイジングと時間をずらして多面的に展開することによって、コンテンツの価値を連続的に高める戦略のこと。パチンコ機やパチスロ機へのキャラクターの活用も、そのひとつです。

2007年には、フィールズから黒澤明監督の名作「七人の侍」のパチンコ機がリリースされましたが、このIP再生施策として、映画顔負けの映像を製作することになり、僕が統括ディレクターを担当しました。この時は映画「SF サムライ・フィクション」で知られる中野裕之監督を起用し、ロケ隊とともに約30日間、福島県会津に篭って撮影を行いました。広告とは次元の違う大規模なチームを統括し、ディレクションできたことは大きな自信に繋がりましたし、この経験があったからこそ「ALWAYS 三丁目の夕日」のスタッフを起用した吉野家のCM制作にも自信を持って取り組むことができたと思っています。

もうひとつ印象に残るIP再生戦略として、ヤングジャンプで人気を博した「GANTZ」のフル3DCG映画化「GANTZ:O」があります。目先の興行収入やPR効率を考えると、映画化に際しては著名タレントや俳優をキャスティングするのが常道ですが(実際に同時期にフル3DCG映画化された「ファイナルファンタジー」は俳優をキャスティングし、CGによって現実に近い世界観を作ることを目指していました)、「GANTZ:O」では、奥浩哉先生のキャラクター、世界観を厳密に3DCGで再現することにこだわり抜きました。これによって、IPとしてのブレのない世界観が構築でき、既存ファンの深化、新規ファンの拡大が図れた上、奥先生との信頼関係も築くことができました。今後、奥先生の作品の3DCG化には、フィールズに大きな優位性が生まれたと思います。タレントや俳優に依存しなかったことは、遊技機への展開時にも有利です。いわば、IPの再生戦略は、コンテンツのブランドを高め続ける中長期的な成長戦略。そこには、広告制作とは違った面白さがあります。

フィールズは円谷プロダクションの親会社でもあり、ウルトラマンのIP展開もフィールズの仕事です。僕自身ウルトラマン世代で、フィールズが親会社になる以前から円谷プロダクションの仕事もやっていたことがあり、楽しく仕事をさせていただいています。ウルトラマン基金やウルトラマン50周年のロゴマークなどのディレクションや、新しい事業を起こす場合の企画にも参加しています。  他にも、フィールズには、全国のショールームの制作からディレクションまで全てを任せて頂きいています。フィールズのクリエイティブに全般的に携わっている事で、常に刺激を受けられることに心から感謝しています。