butterfly・stroke inc.

青木克憲の考え方

Chapter 9

平面から映像、立体へ

グラフィックデザイナー時代、僕は、ポスターなどの一枚絵、平面の表現にこだわってきました。しかし、ディレクターになりテレビCMなどの展開も増え、大きなキャンペーンではノベルティなど立体の展開もするようになると、だんだんに平面だけより、映像もあった方が良いし、立体的なものもあれば完璧と思うようになっていきました。単純な話、その方が五感を刺激できて、記憶に残りやすいものになると思うからです。

こう考えると、つくるものもよりフレキシブルになります。コンセプトさえ合っていれば、必ずしもひとつのキャンペーンを、ひとつのヴィジュアルで展開しなくて良いし、表現は、どうにでも変えて考えていけるようになりました。今では、何をするにも必ず「平面、映像、立体」ということをひとつの表現セットとして、考えるようになりました。

そのためには、自分の好きな表現がどんなふうに「平面、映像、立体」に落とし込まれていくのか、それぞれの過程でどのような作業が必要なのか、仕上がりはどんなイメージになるのかといった基本的な作業過程も知らなければいけません。

いきなり何でもかんでもやるのは無理なので、日々のひとつひとつの仕事の積み重ねが大切なのです。日々の仕事の積み重ねの重要性と同じく、ひとつの仕事の中で、小さいけどコンセプトにあったものの積み重ねの作業も非常に重要です。その積み重ねこそが、表現になっていくのですから、ひとつの過程もおろそかにはできません。

またその緻密な積み重ねをすることで、仕事に対しての自信が芽生え、共同で制作している仲間にも共通の誇りや一体感が生まれます。

ひとつの考えにはいくつかのキーワードがあって、その優先順位を明解にして、さらにまとめて言うと「これだ!」というワードが出てきます。

最終ワードが例えば『赤(レッド)』だった場合は、『超』とか『スーパー』とかを付ければ『超レッド』とか『スーパーレッド』とかになりますよね。そういうことで、ワードを強調するとひとつの考えとしてのワードが際立って聞こえてきます。この強調し、まとめた考えを、スタッフと共有すると、コンセプトがぶれにくくなります。

考えをまとめて整理し、わかりやすくすること、そして最終ワードを導き出すことが、深く考えることなのです。

またデザインやディレクション/プロデュースはコミュニケーションをとることそのものだと思います。このコミュニケーションも、とても様々なアプローチの仕方があります。どのアプローチが最適なのかは、ケースバイケースですが、まずは、どうしたいのかをクライアントに聞くことが必要です。

漠然としたオリエンテーションだとしても、端々にいろいろなキーワードが必ずあります。メモをとることも大切かもしれませんが、メモよりも、伝えてくださる方がどこを強調しているか、どうしたいと思っているのかをしっかりと聞くことが大切です。何が大切かは、オリエンシートよりもその人の目を見て聞いていると意外とわかり、整理もつきやすいと僕は感じています。