butterfly・stroke inc.

青木克憲の考え方

Chapter 17

@btfでコミュニケーションはさらにオープンに

その頃になると、オフィス中にインテリアや小物、子どもの頃の記憶を呼び起こすために買い集めたオモチャなど、自分自身で探して揃えてきたものの量が多くなり、収容しきれなくなってきました。かといって捨ててしまうのは忍びない。それならいっそ販売してみようというアイデアに至りました。自分が良いと思っている物を、同じように良いと感じてくれる人と出会えて、その人はどういう点を良いと思っているのか聞けたら…。そんな考えからでした。従来はオフィスに来る人とのコミュニケーションだけでしたが、一般の人にも拡げてみたら、もっと自分の情報をアップデートできるはずと考えたのです。そうして2008年、勝どきの倉庫ビルに「shop btf」をオープンさせました。

ここはショップという形態をとりましたが、新富オフィスに自分の好きな物を並べてお客さんとコミュニケーションをしていることと、考え方は何ら変わっていません。同じような状況を作って、それをショップという形態にすることで、オープンに出来るようになったという違いだと考えています。  目の前にあるモノを通して、物事の善し悪しや方向性をディスカッションできることは何より伝達スピードが速く、実際に見るだけでなく、触れることでリアリティ、具体性は深まります。クリエイティブにとっては、それがとても大切だと思うのです。相手と共通認識をはかるためには、実際に目の前に存在する物の波及力は大きいと思っています。

「バタフライ・ストローク」の意味

最後になりますが、「『バタフライ・ストローク』っていう名前をどうしてつけたんですか?」ってよく聴かれます。「青木克憲デザイン事務所」といった名前の会社名より、何かキーワードのようなユニット名のような会社名にしたいと思いました。「バタフライ・ストローク」は水泳のバタフライのことで、幼い頃、習っていた水泳は、クロール、平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライの順に習っていきます。最後に習うバタフライは、一所懸命に泳がないと上手くできないといった、自分なりの思い入れがある種目でした。人にはわからないけど自分自身には、「一所懸命にやらないと出来ない」といった意味のあるキーワードを会社名にする事で、「初心忘るべからず」的ないつまでも始めた頃の謙虚で真剣な気持ちを持ち続けていかねばならないという戒めを込めて着けたネーミングでした。またマークもバタフライの略で、「btf」になっていますが、これにも、もうひとつの意味を込めています。僕が、デザインを目指していた学生の頃、影響を受けた映画に「バック・トゥ・ザ・フューチャー」があり、略して『BTTF』『BTF』とも呼ばれている映画です。過去と未来を行き来して起こる様々な展開と未来的な発想で、とにかく面白くてカッコいい、ブームが生まれるほど大ヒットした映画です。僕は、これが大好きで、自分もデザインやディレクションを通じて、観る人を楽しませることが出来るモノを作り続けたいと思ってこのマークを使っています。