デハラユキノリ×金子ナンペイ

さまざまな広告、本の装丁、CDジャケット制作で活躍する、ふたりのクリエイターがいます。フィギア・イラストレーターの肩書きで活動を行うデハラユキノリさん(ナイキ、タワーレコード、アシックスヨーロッパなど)、そして、イラストレーターの金子ナンペイさん(ハッスルのポスター、キリンジ、m-floのCDジャケットなど)です。彼らが結成するのは、東京メンズペインター協会という不思議な組織です。一体、どのような組織なのか? おふたりをお招きして、その生い立ちについてを語っていただきました。どうぞお楽しみください。

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ふたりの出会い

金子:はじめて会ったのは、2003年の冬でしたね。最初は、僕はわりと、いやらしい感じで彼に興味を持ったんですよ。彼がフィギュアを売っているのを見て、僕の頭の中には、フィギュアやグッズを売ってお金を稼ぐなんていう発想がまったくなかったから“一体何なんだろう?”って、そういういやらしい好奇心があって、近づいたんですね(笑)。

デハラ:出会った当初はメールでのやりとりだったんですよ。それで、メールに書かれる彼の言葉がとても丁寧なんですけど、ウィットに富んでいたんですね。あ、面白い人だー。最初、僕は、そう思ったんです。それで、僕の方からアプローチがはじまるわけですね。

金子:そう。そうしたら、今度は、彼が僕を飲みに誘ってきたりしたんです。僕はこもって制作に打ち込むタイプなので、飲みとかは極力断るようにしているんですね。それでも本当に誘ってきて、そのうち、世間話的にしていた展覧会を催す話までするようになってきたんです。最初はこちらから近づいた僕でしたが、“面倒くさい”って感じになってた。それなのに、彼が強引に話を進めていったんです。

デハラ:“確か展覧会やりた”って言っていたな、と彼の言っていたことを聞きもらさずに、“展覧会のことなら、この僕に任せてよ”みたいなノリで、接近していったんですね。

金子:それで、彼が話をどんどん進めるから、“こいつ、ふざけるな!”みたいな感じだったんですけど、結果的には、“じゃあ、妥当、TIS(Tokyo Illustrators Society)の、東京メンズペインター協会というのを設立しよう!”っていう話の流れになったわけですね。とは言え、最初にやったのは、フツウの2人展だったんですけど(笑)。

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メンペ結成

デハラ:TISというのは、錚々たる大御所のイラストレーターの人たちが集って結成されている協会なんです。僕は、最初は、そこに入りたくて仕方がなかった。僕なんて、申込みまでしましたから。だけど、入れてもらえなかったので、だったら、こちらはこちらで協会を設立して騒ぎ立てていたら、入れてくれるんじゃないかなぁっていう風に思ってたんですね。

金子:それがメンペ、つまり東京メンズペインター協会の設立の経緯ですね。

デハラ:そこから、メンペの活動がはじまるんです。活動内容としては、1年に1度の展覧会のほかに、いろいろなパフォーマンスをしたり、インターネットのラジオ、メンペデジオをやったりしている感じです。

金子:そもそも僕らがパフォーマンスをやりはじめたのは、「メン忘」と名付けた忘年会を開いたときに、居酒屋でカンタンな寸劇をやったことに端を発しているんですね。そこから、妖怪劇をやったりもして、パフォーマンスをやるようになっていった。

デハラ:それで僕らとしては、"なにか、テレビというメディアに出るということをしたいね"という話をしていて、そんなときに鈴木おさむさんという有名な放送作家の方と対談する機会を得て、そのときに「路上で1000人集められるようになったら、テレビの取材がくるよ。イラストに興味のある人たちより、イラストに興味のない人たちの心を掴むような活動ができたら、ムーブメントになるぞ」というようなことを言っていただいたんです。

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パフォーマンス活動

金子:そこから、NHKセンター前の石畳広場で月1回のペースで定期的に、精力的にパフォーマンスをやるようになったわけですね。絵の具をつかって、絵と劇が融合したようなパフォーマンスなんです。

デハラ:結構、過激なパフォーマンスをやっていて、僕たちのシンボルにもなりつつあるブリーフ一丁で相撲をとったりしていますね。あとは、ブートキャンプをすぐにネタに取り入れたり、腸が飛び出して足にひっかかるパフォーマンスをしたり、いろいろ体を動かすんですね。

金子:でも、体を張ってやるパフォーマンスだから、本当に危ないんですよ。肘を怪我したり、恐いんですね。絵の具も飛ぶしね。

デハラ:そうなんです。一度、あるイベントに呼ばれてパフォーマンスをしている最中に、絵の具の塊が、ビューンッて飛んでいって、ギャラリーのひとりだったオバさんの服にベチョッとついてしまったことがありました。そのとき、その場の空気はかたまりましたね(笑)。僕らは、絵の具というのは仕事で使っているから使い慣れているつもりでいても、決して、そんなに簡単なものじゃないんですね。

金子:あと、お台場のフジテレビに、あるキャラクターを提案しにいったりもしましたね。それから、デハラ君はパフォーマンス中に、一度、落ちて、死にかけたことがありましたね(笑)。

デハラ:本当に、あれは笑いごとじゃなかったんですけど、気がついたら、僕の前に金子さんが仁王立ちしている感じで、本当に恐くなりましたね。その事件を機会に、一回、やめようということになったんです。

金子:それから、僕らは、数回開催してきたメンペ展では必ずポスターをつくるんですね。これまでは、ブリーフ姿のホモ、お相撲、女装をフューチャーしてきましたが、やっぱり評判がいいのは女装なんですよね。でも、一番、メンペがお客さんの印象として残るのは、ブリーフ一丁でやる相撲みたいですね。

デハラ:ああ、確かに、「今日は相撲やらないの?」って言われるようにまでなりましたからね。でも、結局のところ、僕らのメンペというものは、ふたりで遊んでいるというのが一番的確かもしれないですね。

金子:最初は、打倒TISなんてものを掲げていましたけど、結局、そういうのは、今はどうでもいいことになっていますからね。

デハラ:実際には、メンペをつくってからお誘いもきたんですけど、断ってしまいましたしね。僕らの他にもいた、ふたりのメンバーには連絡がわずらわしくて連絡しなくなってしまいましたしね。でも、これからも、ふたりでいろいろ楽しく遊んでいけたらいいなぁ、そう思っています。

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コメディアンのように、小気味の良い掛け合いが、なんとも言えずウィットに富んでいて、愉快でした。最後に、相撲まで取ってくれたおふたり、本当にどうもありがとうございました! ふたりの今後のさらなる活躍に期待をしていきましょう。

■デハラユキノリ

1974年高知県生まれ。東京を拠点に、フュギュアイラストレーターの肩書きで活動を行い、広告、雑誌のイラスト、書籍の装丁、CMのキャラクター制作、そしてフィギュアの制作などを行っている。ナイキタワーレコード、アシックスヨーロッパ、「きのこの山」のキャラクターなど、その作品も広く知られている。

■金子ナンペイ

1968年神奈川県生まれ。書籍の装丁、広告、CDジャケット、格闘技イベントのポスターなど、幅広く活躍する。迫力のある肉感のあるリアルな、インパクトのあるイラストを描く。プロレス団体『ハッスル』のポスターや、『氣志團』のコラボグッズ、雑誌『サイゾー』の表紙などで知られている。